なんかそういうの読んだので

ショートショートでも書いてみようと思ったんですけどね。


「こうして、某国の核開発は終結し、某大国との敵対関係もこれで終わりを向かえ……」
その男は、最期を迎えようとしていた。
もう自分に出来る事は何もない。男はそう悟り、あとはただぼんやりとテレビを見るだけ。
目元に刻まれた皺は、年輪のようだった。
苦労と共に数を増した白髪は、もはやその役目を終え、全て抜けきっていた。
だが、男の顔は満足気だった。
彼の人生は、波乱万丈。人一倍の苦境を乗り越え、かなり成功を手にした。そして、愛する家族も。
傍らには、一人の上品な老貴婦人と、精悍そうな顔つきをした男が二人。彼の妻と、息子達だ。
心優しく、されど芯は強く。社会で活躍できる、最高の男達に育ったと思う。
「あなたこそ」
貴婦人は穏やかな声色で言った。
「家には中々帰っていらっしゃらなかったけど、最高の夫でしたわ。もしもう一度生まれ変われるなら、またあなたと……」
「もう一度、か……。出来ればもう一度生まれ変わって、お前達の行く末を見届けたかったのだが……」
男はふっと、疲れを見せた。男には、一つだけ気がかりがあった。
「すまんな……。これで、家族の絆が壊れてしまうかも知れないのか……」
「そんな、有り得ませんわ!」
貴婦人は首を振った。
「遺産相続争いなど、決して致しません。貴方はこの子達に、お金に縛られない生き方を教えたじゃないですか!」
「そうだよ、父さん!」
と、長男。次男も力強く頷いていた。
「私達の方からも、一つ、言っておかなければならない事があるのです」
そう言うと、妻は手元の看板らしき何かに手を伸ばし……。
「「「はいドッキリでしたー!」」」
男の家族は、満面の笑みと満ち満ちたテンションで叫んだ。
「僕達あなたの息子じゃないですー!」
「あなたの部下の息子ですー!」
四十を超えた兄弟が、両腕を上げ飛び回って、教えたこともないコンビネーションを見せた。
「もう一度生まれ変わったら、ジョニー=デップと結婚しますー!」
貴婦人……いや、婦人は言った。
「そうか。それは良かった」
だが、普通ならば叫びだしそうな状況なのに、男の顔からは、疲れが抜けてゆく。とまどう家族。
男は死にかけの
「はい、ドッキリでしたー!」
それっきり、男は何も言わなくなった。多分死んだ。
家族達が首をかしげていると、不意に玄関のドアが銅鑼のように叩きつけられた。
「オラ!居るのは解ってんじゃコラ!せっせとこさえた借金30億円!今日こそ耳を揃えて返してもらいましょかコラ!」
借金取りだった。
テレビを点けていては見つかってしまうと、兄がリモコンに手を伸ばしたそのとき、キャスターが言った。
「えー。これまでお伝えした全てのニュースは、ドッキリです」
地球は核の炎に包まれた。
遺されたわずかな人類は神を恨んだ。
「ああ神よ!我々を、世界をお作りになった神よ!何故貴方は、苦難ばかりを下さるのか!
どれだけの苦しみを越えれば、希望を与えてくださるのですか!」
神は、人に答えた。
「はいドッキリでしたー!」
世界は消えた。
ニヒリストだけが残った。


面白いオチを期待していたあなた。
はい、ドッキリです。
ていうか大体借金取りあたりから面倒になって巻きでいきました。
これだけは、真実です。